「演じる起業家」〜世界を舞台に活躍する女優起業家の話〜 9
出産後の一ヶ月も2人で休みをとることにしたので、子供の成長をじっくり楽しむことが出来た。
恐らく寝る暇もなく大変だったかもしれないが、それこそ必死だったので、この頃の事はすっかり忘れてしまった。
そして2ヶ月経ったころから息子と2人でのイギリス通いが始まった。
これにより、今まで自分がどれだけ自由を謳歌していたのか実感した。
だいたい国を越える際は小さいスーツケース1つだったのが、ベビーカーを押しながらではスーツケースすら持てない。
飛行機ではベビーカーは没収されるので抱っこしながら自分の荷物と息子の荷物を持つ。
飛行場からバスに乗ってロンドン市内へ。
そこからは地下鉄とバスがメインになるが、地下鉄には滅多にエレベーターはない。そうなると100%抱っこひもで移動する。
子供を一瞬だけ所属する事務所に預け、映画の取り切れなかった音を撮るADRという作業やオーディションに向かった。
あるキャスティングの前に、事務所の社長が
「今からあなたは母親じゃなくて、あなたよ。楽しんできて」
という言葉を掛けてもらったことで、肩の荷がおりた。
そしてそのオーディションで役をもらった。
すでに予定をしていた来日を息子2人で果たし、戻ってきて映画の収録のため家族で東ヨーロッパのセルビアへ。
シーンとシーンの間に母乳をあげた。
17歳の役なのに、待合室のトレーラー(トラック)には子供が。
正直集中できる環境ではなかった。
その後は旦那の収録に付き合い、クロアチアへ。
そこは海とプールしかないリゾート地だった。
なにも出来ないホテルで思うように料理も出来ずに息子と過ごす日々は苦痛以外のなにものでもなかったが、必死に乗り越えた。
そしてイギリスのビザが切れ、ココから私は地獄へ落とされた。
山下結穂/Yuho Yamashita
フィルニーズヨーロッパLTD代表取締役、起業家、クリエイティブコンサルタント、起業コンサルタント、女優、そして一児の母。英国ならびにヨーロッパにて活動中。 幼少期は演劇界にて活躍。ミュージカルアニーのアニー役、NHK朝の連続テレビ小説「甘辛しゃん」にてヒロインの子供時代を演じる。 高校時代のアメリア留学を経て同志社大学入学。中途退学後早稲田大学進学、ドイツ・フライブルグ大学留学後帰国せず卒業。自然環境学学士。 現在は英国を拠点にパインウッドフィルム作品やドイツ国営放送ドラマに出演しつつ、英国、そしてドイツにて起業。その豪華客船会社キュナードにてクリエイティブコンサルタントとして映像広告を制作、また複数国のビザを所有し起業した実績をもとに、世界で起業するためのノウハウを伝授する。 Futagami氏の想いに共鳴し、この組織が海外に進出することの手助けになることを願いつつIGIRISU-NETの代表として奮闘中。
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