「演じる起業家」〜世界を舞台に活躍する女優起業家の話〜 10
ドイツに戻り、旦那がある長期の仕事でベルリンへ。
その時から私は愛の巣であるべき場所を牢獄と感じるようになっていた。
なぜか。
それは私がこのライプチヒという小さい町に縁もゆかりもないため。
小さすぎる町では出来ることがないため。
ドイツ語だけの環境に疲れ始めていたため。
イギリスというやるべき事がある場所から遠のいたため。
家はエレベーターのない5階立ての5階であるため。
トイレにも行かせてくれない息子が「私」を奴隷扱いするため。
体力の限界を感じていたため。
ほぼ一人で息子の世話をし疲労していたため。
ドイツで仕事を滅多にしなくなっていたため。
息子の成長を喜ぶ母親の私。
自分をいうものを失い、途方にくれる私。
旦那と私はまったく同じ「宝」を手に入れた。
それなのになぜ私だけが全てを失ってしまったのか。
現場に出て働ける旦那が恨めしくてしょうがなかった。
その悔しさから、経済的に旦那に頼るまいと意地をはった。
これにより自由にお金を稼げる旦那が疎く感じるようになってしまった。
これまでと変わらない、もしくはそれ以上の愛情を向ける旦那。
でも「愛」というのは、自分の事を愛せているからこそ他人にあげられるものであるからして、私にこの段階でそれは出来なかった。
だから彼を見ていることも、与えられる「愛」も苦痛以外のなにものでもなかった。
そしてそれに平行して私の体重は激減し、体調を崩し始めた。
愛されていることを不幸に感じる私みたいな人間に価値なんかない。
そう感じるまで病んでしまっていた。
山下結穂/Yuho Yamashita
フィルニーズヨーロッパLTD代表取締役、起業家、クリエイティブコンサルタント、起業コンサルタント、女優、そして一児の母。英国ならびにヨーロッパにて活動中。 幼少期は演劇界にて活躍。ミュージカルアニーのアニー役、NHK朝の連続テレビ小説「甘辛しゃん」にてヒロインの子供時代を演じる。 高校時代のアメリア留学を経て同志社大学入学。中途退学後早稲田大学進学、ドイツ・フライブルグ大学留学後帰国せず卒業。自然環境学学士。 現在は英国を拠点にパインウッドフィルム作品やドイツ国営放送ドラマに出演しつつ、英国、そしてドイツにて起業。その豪華客船会社キュナードにてクリエイティブコンサルタントとして映像広告を制作、また複数国のビザを所有し起業した実績をもとに、世界で起業するためのノウハウを伝授する。 Futagami氏の想いに共鳴し、この組織が海外に進出することの手助けになることを願いつつIGIRISU-NETの代表として奮闘中。
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