「演じる起業家」〜世界を舞台に活躍する女優起業家の話〜 6
旦那とは、ある内容の薄いドイツ映画の収録現場で知り合った。
初めて会ったときは、顔が長くて鼻がでかいドイツ人としか思わず、隣にいた別の役者の方が好みだと思っていた。
ただ彼は面白くて、話が聞ける、ドイツでは珍しい存在だった。
(誰がドイツ人は面白いというイメージを持っているだろう?)
しかもまだまだだった私のドイツ語で話す話を興味深そうに聞いてくれた。
だから1ヶ月間の収録中、常に話していた。芝居のこと、これまでいくらお互いいくらサギにあったか、なぜ彼が中国武術を選んだのか、なぜ私が日本を恋しく思うのか・・・
また私は彼にアクションを教えてもらったり、彼は私にバレエの基礎を仕込まれた。
そして収録最終日に、それなりに楽しいセックスを体験した。これまでの体の関係では苦痛の方が大きかったので、少しびっくりした。
そして収録後に再会した時、お互い相手がいることが判明した。
・・・ちょっとホッとした。
心苦しかったのは私だけじゃなかったみたいだから。
しかもあっちは7年付き合ってると言ったから、笑えてくる
ちなみにドイツ人は世界不倫率第3位だそう。
それは置いておいて。
彼は東ドイツ出身。
東ドイツ人は自分に自信がなく、卑屈な人が多い。
彼も未だに、東ドイツ時代には、僕がこうやって世界を旅して、日本人の奥さんをもらうなんて思いもしなかったと、週に1度は言う。
私は根拠ない自信がある人は苦手なので、この程度の方が居心地がよかった。
しかし、これまで彼は彼女の方から別れを切り出されていたので、別れの切り出し方は知らなかった。
そして話を切り出してから、彼は喧嘩別れしないように2人でカウンセリングを受け、円満な別れ方をした。
それまで一年かかったが、口出ししたってしょうがないので、とりあえず彼の判断に全て任せ、私は観察していた。まるでドラマでも観ているかのように。
それからドイツとイギリスの遠距離恋愛が始まり、お互い2週間に一回お互いの国に飛んで一緒に時間を過ごした。
お互い仕事で精神を削っているため、「愛」やらという言葉を惜しげも無く使って寄り添った。これは家族から長くは慣れて暮らしている私にはかけがえのないもののように当時は思えた。
ちなみにこの時にかけた飛行機代に関しては触れないでほしい。
そして頼んだ記憶はないが、私がイギリスからドイツへ戻ってくると信じ、彼は地元のドイツ・ライプチヒで愛の巣を探し始めた。
そして生理不順の私が妊娠するのか、という問いと試しの結果、私でも妊娠出来るのか、という疑問に答えが出た。
非正式に付き合いだしてから2年後の春の出来事だ。
山下結穂/Yuho Yamashita
フィルニーズヨーロッパLTD代表取締役、起業家、クリエイティブコンサルタント、起業コンサルタント、女優、そして一児の母。英国ならびにヨーロッパにて活動中。 幼少期は演劇界にて活躍。ミュージカルアニーのアニー役、NHK朝の連続テレビ小説「甘辛しゃん」にてヒロインの子供時代を演じる。 高校時代のアメリア留学を経て同志社大学入学。中途退学後早稲田大学進学、ドイツ・フライブルグ大学留学後帰国せず卒業。自然環境学学士。 現在は英国を拠点にパインウッドフィルム作品やドイツ国営放送ドラマに出演しつつ、英国、そしてドイツにて起業。その豪華客船会社キュナードにてクリエイティブコンサルタントとして映像広告を制作、また複数国のビザを所有し起業した実績をもとに、世界で起業するためのノウハウを伝授する。 Futagami氏の想いに共鳴し、この組織が海外に進出することの手助けになることを願いつつIGIRISU-NETの代表として奮闘中。
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