「演じる起業家」〜世界を舞台に活躍する女優起業家の話〜 2
また役者として必死に生きてみた。 もう一度、芝居をするという意味を追求し始めた。
そして演じるということにも、確立された技術があるという事も知った。(知らなかったというより見ない振りをしていたのかもしれない。)
それを教えてくれた、ベルリンで演技の学校を開くイギリス人の演技指導者は、自分の回りにある殻を破り、人を受け入れ、自分の中のヘドロを掘り起こすことを私に命じた。
中身が無い事を繕うかのように、外身を知識で固めていた私。 結局、ヘドロが入った壷の蓋を開けることによって、傷つくのを避けていたのだ。
殻を破る方法のひとつはこれだ。
ある人と向かい合う。 その人を見た時に思ったことを口にする。
「悲しそうだね。」「太ってるね。」「キレイな目だね。」
それを相手がオウム返しする。 また繰り返し言う。 完全に自分が理解するまで繰り返し口にする。 これにより自分がどう感じるかを読み取る。
私にかけられた言葉は 「君のドイツ語、何言ってるか分からない。」 ドイツ語で稽古している為、発音が悪いと理解してもらえなかった。 一般的には必死に言葉を学んでいる相手にかける言葉ではない。
でもそれを自分でも繰り返し口に出す。 「私のドイツ語分からない。」
動揺する。
自分の至らなさに悔し涙が出る。 そして新たな感情が生まれる。 それをまた言葉にする。
これが人間の会話の本来あるべき姿だ。 こうやって、自分を引っ掻き回すことで、情熱に油をさす魂を見つけ出す。
結局私の中で芝居とは、自分の中にある闇をさらけ出し、誰かに助けを求めることに過ぎない。
でもそれが受け入れられたとき、私の魂は「喜び」を掴む。
山下結穂/Yuho Yamashita
フィルニーズヨーロッパLTD代表取締役、起業家、クリエイティブコンサルタント、起業コンサルタント、女優、そして一児の母。英国ならびにヨーロッパにて活動中。 幼少期は演劇界にて活躍。ミュージカルアニーのアニー役、NHK朝の連続テレビ小説「甘辛しゃん」にてヒロインの子供時代を演じる。 高校時代のアメリア留学を経て同志社大学入学。中途退学後早稲田大学進学、ドイツ・フライブルグ大学留学後帰国せず卒業。自然環境学学士。 現在は英国を拠点にパインウッドフィルム作品やドイツ国営放送ドラマに出演しつつ、英国、そしてドイツにて起業。その豪華客船会社キュナードにてクリエイティブコンサルタントとして映像広告を制作、また複数国のビザを所有し起業した実績をもとに、世界で起業するためのノウハウを伝授する。 Futagami氏の想いに共鳴し、この組織が海外に進出することの手助けになることを願いつつIGIRISU-NETの代表として奮闘中。