英国で教育しよう!長男の巻:プレップ・スクール その2
長男がYear6になったとき、ウェストミンスタースクールとセント・ポールズスクールのそれぞれのオープンデー(学校見学の日)に長男を伴い夫と行った。ウェストミンスタースクールはロンドン中心にあるウェストミンスター寺院に隣接している1560年に女王エリザベス一世によって創立されたパブリックスクールだ。一方、セント・ポールズは、1509年に当時のセントポールズ大聖堂の主任司祭、ジョン・コレットによって大聖堂の敷地内に建てられたパブリックスクールで、1884年に現在の場所、バーンズに移動している。この二校は学力の高さと伝統で、ロンドンのパブリックスクールとしては双璧と言われている。両方見に行った結果、長男はセント・ポールズが気に入った。なぜなら広大な敷地の中にはラグビー場、艇庫、ジムや、スイミングプール、フェンシング場、ラケットコート、テニスコート、柔道の道場、音楽ホールなどの施設を備え、学業面のみならずスポーツ、演劇、音楽等の課外活動面でも楽しめると思ったのであろう。それに反して夫はウェストミンスタースクールが気に入った。公式晩餐会のダイニングホールとして使われ、エリザベス一世も食事したという、創立当初から残るコレッジホールなどが構内に存在し一世一代では築くことのできない伝統の重みにいたく感動したようだった。
Year6の終わりにノースブリッジからの推薦をもらって両校の面接を受けた。本人だけの面接だ。面接時には口頭で算数の問題を解いたり、英語でなんの教科が好きかなどを聞かれれるが基本的にはプレップスクールからの推薦があればその時点での合格はほとんど間違いなく、あとはプレップスクール最終学年のYear8の終わりに受けるコモンエントランス試験で一定の成績を収めて入学が決まる。要するにフィーダースクールとパブリックスクールは信用関係で成り立っており、パブリックスクールはフィーダースクールが推薦する生徒たちは安心して本学に入れられる、と判断する。プレップスクールは自分が推薦した生徒にはその生徒が行くパブリックスクールの要求するコモンエントランス試験の成績がとれるように2年間の間にしっかり試験対策をしてくれる。
長男はウェストミンスタースクールとセントポールズと両方面接に行き、両校から合格通知をもらい、その結果やはり自分の気に入ったセントポールズを第一志望にしてコモンエントランス試験に臨むことにした。前回書いたとおり、科目は、フランス語、ラテン語、古代ギリシャ語、算数、英語、歴史、地理、生物、物理、化学である。毎日宿題もたくさん出たし、模擬試験も何回も学校がしてくれたので塾に行く必要がなくそのため、時間をうまく使って日本人学校もピアノもテニスも続けることができた。そう言うと日本の受験に比べて余裕をもっているように聞こえるかもしれないが、最初の経験であったので、本人も親も英国での中学受験に一生懸命に取り組んでいた。そんな矢先に夫の会社から日本に転勤との通知が来た。
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*学校区分の日英比較は大体下記のとおり。(英国日本婦人会発行『ロンドン暮らしのハンドブック』2017年5-8改訂版p。35参照)
Miho Uchida/内田美穂
聖心女子大学卒業後外資系銀行勤務を経て渡英、二男一女を育てる傍らオペラ学を専攻、マンチェスター大学で学士号取得。その後UCLにてオペラにおけるオリエンタリズムを研究し修士号取得。ロンドン外国記者協会会員(London Foreign Press Association)。ロンドン在住。ACT4をはじめ、日本の雑誌にて執筆中。