英国で教育しよう!長男の巻:ナーサリーとプレ・プレップスクール その3
ウィンドミルスクールには日本人の子供も何人かいた。ほかの子供たちは白人のイギリス人、アメリカ人、スペイン人、インド系英国人など国籍は多彩だった。ここで気がついたことは英国にはオペアがたくさんいることだ。オペアとはホームステイさせてもらう代わりにその家庭の子供の面倒を見たり家の手伝いをして報酬を受ける人のことだ。ロンドンには英語を習いたい人が世界中から来るので、例えば一日6時間働いて報酬を貰い、残りの時間に英語学校に行って勉強をしたい若者にとってオペアになることは好都合だ。一方、両親共が働いている家庭が多いので学校への送迎など、オペアのニーズは高く、実際、トルコ人や東欧人などのオペアを持っている家庭が少なからずあり、両親の顔は見た事がないが、毎日オペアと顔を合せて彼女達と仲良くなるケースも多かった。オペアを住まわせる部屋のある家が必要で、ミドルクラス特有のニーズと言え、長男と次男が通っていたモンテッソーリの幼稚園と私立の幼稚園及び小学校にはオペアは多くいたが、長女が通っていた公立の小学校にはオペアは一人もいなかった。英国の学校では公立、私立を問わずペアレンツイブニングと呼ばれる両親面談があるが、それは仕事が終わってから来られるように夜に設定される。一方、この国の法律で決まっているわけではないが、児童保護のために活動するチャリティ団体であるNSPCC(National Society for the Prevention of Cruelty to Children)は「12才になるまでは16歳以上の人間が一緒にいないと一人で家で留守番させるべきではない」と忠告している。つまり、小さな子供を家に置いて両親で学校に来るには誰かが子供の面倒を見るのが前提で、「誰かに預けていらっしゃい」ということだ。したがって、オペアがいない家庭では、ベビーシッターを使うのが一般的があり、それも新たな発見だった。実際、長女の通っていた高校では学校でベビーシッターを斡旋していた。彼女の学校は4歳から18歳までの女子校だったので、16歳以上の生徒に年少の生徒の面倒を看る仕事を斡旋するのだ。同じ学校の素性の知れた高校生に自分の子供を預けるのは安心だし、学校のシステムの事も高校生に聞く事ができる。ペアレンツイブニングに限らず、夜に両親が食事に出かけたり演劇を観たりと夫婦単位で出かける機会が多い英国ならではのシステムだ。娘も学校の紹介で随分ベビーシッターのアルバイトができた。
さてモンテッソーリ・スクールは2歳から5歳までの学校だったので、長男は1年通った時に次の学校に移らなければならなかった。ロンドンに以前住んでいた友人がノースブリッジというとてもいい学校があると言っていたのを思い出してそこを訪ねていった。ミセス・オールソップという名の校長先生が学校を案内してくださった。紺色のスーツを着た保守的な感じのする年配の先生で、特に親の職業を訊ねるわけでもなく、なぜ英国に住んでいるのかも尋ねるわけでもなく来年から空きがあると言って、歓迎してくれた。暗中模索だった私たちはまたしてもご縁のあるままに特に他の学校の見学もせずにそこに決めた。ただし、学校を案内してくださる時の校長先生のその態度といい、壁に飾ってある子供達の作品といい、ここに長男を通わせても大丈夫。という第6感のようなものは常に働かせていたように思う。(続く)
*学校区分の日英比較は大体下記のとおり。(英国日本婦人会発行『ロンドン暮らしのハンドブック』2017年5-8改訂版p。35参照)
Miho Uchida/内田美穂
聖心女子大学卒業後外資系銀行勤務を経て渡英、二男一女を育てる傍らオペラ学を専攻、マンチェスター大学で学士号取得。その後UCLにてオペラにおけるオリエンタリズムを研究し修士号取得。ロンドン外国記者協会会員(London Foreign Press Association)。ロンドン在住。ACT4をはじめ、日本の雑誌にて執筆中。