英国で教育しよう!長女の中学校受験その3
英語はS.H 先生、算数はミセスD、そしてバーバル・リーズニングとノン・バーバル・リーズニングは私がS.H先生に出された問題を添削することによって長女の受験勉強が始まった。次はどの学校を受験するかを決めなければならない。長女は今となっては学校に男子がいればどんなに楽しいかと思っているのでこのときの自分の発言を後悔しているのだが、この時点ではなぜか女子校に行きたいと言った。従って私は我が家から通える女子校5校を選んだ。5校のうち1校は公立でヘンリエッタ・バーネットと言った。毎年GCSEやAレベルの学業成績で上位に必ず入る名門公立女子校である。1912年にヘンリエッタ・バーネット女史によって建てられた。バーネット女史は女子の教育、特に金銭的に恵まれない女の子達の教育振興のためにこの学校を建立した。長女の受けた2012年には学力では全国1位の公立校だった。毎年2、000人の子供達が受験し、100人ほどしか入らない狭き門である。あとの4校は私立校でノースロンドン・コリージエイト(NLCS)、チャニング、サウス・ハムステッド、シティという学校を受験することにした。どれも素晴らしい学校であるが、それぞれ特徴が異なる。しかしどの学校が自分の子供に向いているか、また子供本人が好きと思うかは直接その学校を訪ね、校長先生やそこに通っている生徒に会わなければわからない。そのためイギリスの学校にはオープンデーと呼ばれ、その学校に興味のある生徒と親が学校を見学に行かれる日が年に数回ある。在校生達が校内を案内してくれるのだが、案内の途中、授業の内容や、学校の施設、給食のことや課外活動のことなど自分たちの好きなことを何でも質問できる。在校生たちは一生懸命答えてくれるのでかなりの情報が収集できるし学校内と在校生の雰囲気もつかめる。受験1年前のyear5の年にそれぞれのオープンデーを訪ねるのが一般的だ。我が家も5校それぞれのオープンデーに行った。その結果、長女はノースロンドン・コリージエイト(NLCS)が一番好きだった。1850年に女子教育の先駆者である、フランシス・メアリー・バス女史によって創立され、英国で初めて男子教育に匹敵する教育を女子に提供した学校とされている。生徒の学業レベルも高く、GCSEやAレベルの成績で毎年全国で5本の指に入る名門校だ。エッジウェアと言うロンドンを北上した郊外の広大な敷地に建つ緑に囲まれた学校である。本館は19世紀末にチャールズ・マーローによってデザインされたエドワード朝の白い趣のある建物で歴史を感じさせると共に優雅で荘厳な印象を与える。敷地内には50メートルの室内スイミングプールを筆頭に、講堂、演劇用舞台、音楽室、図工室、ジム、科学室、食堂のほか、テニスコート、ラクロスコートも完備し、施設は素晴らしい。風光明媚な環境を長女が気に入ったのは最もだと思ったが、何よりも彼女はそこにいる生徒の感じが好きだったと言う。親の私としては当時の校長のミセス・マッケーブに魅かれた。ホールに集まった親達に向かって「この学校を卒業する時は誰もが静かなる自信を持った人間になって巣立っていきます。」と落ち着いた口調で静かに述べられた。威厳のある自信に満ちた女性だが髪型といい、洋服といいファッショナブルで洗練されている人物だった。
(続く)
*学校区分の日英比較は大体下記のとおり。(英国日本婦人会発行『ロンドン暮らしのハンドブック』2017年5-8改訂版p。35参照)
Miho Uchida/内田美穂
聖心女子大学卒業後外資系銀行勤務を経て渡英、二男一女を育てる傍らオペラ学を専攻、マンチェスター大学で学士号取得。その後UCLにてオペラにおけるオリエンタリズムを研究し修士号取得。ロンドン外国記者協会会員(London Foreign Press Association)。ロンドン在住。ACT4をはじめ、日本の雑誌にて執筆中。