桜堂カフェ:左からトキエさん, メイさん, カヨコさん©️J News UK, Chikako Osawa-Horowitz
今年2月、ロンドンの南に位置するパットニーで新しく和風カフェ『桜堂』がオープン!
先週このお店を訪ねてみた。 しかもこの日はなんと英国の母の日にあたり、和菓子の桜餅が限定発売!
パットニー ハイストリートから横道に入っていくと店の看板ですぐに分かった。店内は明るく、コテコテの「和」を強調するでもない、シンプルでモダンさも取り入れた内装となっている。 店内で早速桜餅を作っているトキエさんにお話を聞こうと待っていると現地のお客さんがひっきりなしに店に入ってくる。バースデーケーキを注文しそれを取りに来る人、抹茶のデザートを買いに来る人。なにやらアレルギー体質の人にも対応するレシピもあるという。 そしてマレーシアからロンドンに留学で来ている学生さんがランチを美味しそうに食べていたので、私もその日お任せランチとげんまん茶を頼んでみた。このランチは抹茶ゼリーもデザートについて来る。食材も吟味されているらしくヘルシーでそれぞれの食材の旨味を引き出すような味わいだった。
日替わりお任せランチ©️J News UK, Chikako Osawa-Horowitz
日替わりお任せランチのデザート©️J News UK, Chikako Osawa-Horowitz
実はロンドンで手作りの和菓子が食べられるところは他に何処もなく、今回和菓子に魅了され、西洋料理のプロであるトキエさんは日本の伝統である和菓子を1から作ることにチャレンジ。
料理人、トキエ・ハマノ©️J News UK, Chikako Osawa-Horowitz
C:和菓子を作ろうと思ったきっかけは?
T:長年西洋料理の仕事に携わり洋菓子は作ってはいたものの、和菓子を作った記憶はなく、それで作ってみたいと思いました。それでタイミングよく今回ロンドンの和風カフェで和菓子を作るチャンスが巡って来たんです。丁度季節は春ということで、真っ先に頭に浮かんだのは桜餅です。 一月の一時帰国で、店頭で見ていながら口にするチャンスがなかったこことも関係しているのか、食べ物の執念とは恐ろしいもので、食べられないなら作ってしまう!っと。
C:桜餅をロンドンで全て1から作るのに苦労したところは?
T:幸い桜の葉の塩漬けもあることから、関西風の桜餅を作ることに決定したのですが、 ここはロンドンなので作り方から、その他の材料の調達、日本で作るように簡単にはいかないです。簡単にいかないもののひとつは「道明寺粉」の入手です。
C:道明寺とは?
T:道明寺粉はもち米を一晩水に浸し、蒸し、そして乾燥させ、粗くひいたものです。 一度水に浸し、火をいれてあるので、桜餅を作るときには時間を要さないです。その肝心要の道明寺粉が入手できないのであれば、自分で作るしかないんです。もち米を水に浸し、水を吸った米を粗く砕き、そして蒸します。手間はかかるのですが、楽しさの方が強かったですね。 出来上がった桜餅。誇らしい気持ちでいっぱいでした。ああ、私はやっぱり料理の魅力から逃れることはできないのかなって思いましたね。
C:他にチャレンジしたのは何ですか?
T:イチゴ大福です。 「大福。アンコを求肥で包んだものでしょう? 簡単、簡単!」と思っていたんです。 でも和菓子のように私の覚悟は甘かったと思わされました(笑) 大福を包むのがこんなに難しいとは思っていなくて。 初めて作った時には、形の悪さに自分にショックを覚えたくらいで、形の悪さというか、包んだ時の求肥の表面が滑らかにならないんです。家庭でつくり、家族や友人と食べる、そんなものなら、ちょっとくらい形が不格好でも許されるでしょうが、これは売り物ですから。 仮にも料理の仕事をしてきた私だし、自分が不器用だとは思っていない、というか小さい頃から器用だねと言われ育ちました。 そして大福の包み方を検索、youtubeを見まくり、短時間に精力を大福につぎ込みましたよ。これこそハマってしまった人間の強さでしょうね。ほんのりとピンク色に染めた求肥で作った二度目のイチゴ大福は「かなりimproveしたね」と仲間に言われるほどでした。
C:和菓子を作って思った事は?
T:とにかく和菓子職人は凄いと言う事です。 これが、自分が和菓子を作り始めてとても強く感じました。 練り切りなどは、毎年干支にちなんだモノを作るため、12年一回りやって一人前といわれるそうです。これからどのくらいの間、和菓子の世界の底をうろついていくのか自分でもわからないですが、楽しいと思っている間はやっていくと思います。とことんやらないと気が済まない自分のこともよく分かってますし。 ロンドンという異国で和菓子を作り、ごくありふれた日本の和菓子を欲している現地日本人が多いことも知り、自分のやっていることが人の為になれば、これほど嬉しいことはないです。そしてこれが働くというものの本質なのかもしれないですね。調理の世界へ進みたいと考えた若い時、和菓子をやってみたいなと思った小さな記憶が蘇ってきたのもここ最近ですね。 材料も簡単に手に入らない環境だけど、このめぐりあわせにとても感謝しています。
その気になる桜餅とイチゴ大福はこちら! トキエさんは料理だけでなく、写真の腕前もプロ級です。ご自分で作った料理を自分で撮影もします。
桜餅+写真©️Tokie Hamano
イチゴ大福+写真©️Tokie Hamano
この日、母と一緒に桜餅を頂いて、お互いに顔を見合わせ、本格的な桜餅がロンドンで食べられることに衝撃を受けた。従来の甘すぎる和菓子のイメージを覆し甘さ控えめ重くならず食べやすさが特徴。一度に10個はペロッと食べられるほどの美味しさだった。和菓子だけでなく、他のデザートも甘さ控えめで食べやすい。
ただ、和菓子には数に限りがあるので、出かけられる前に事前に連絡をしておくのが良いと思われる。他にも抹茶ティラミス、抹茶ミルフィーユ、等もあり、日本茶の種類も充実している。
抹茶ティラミス:Kayoko Okudoh©️©️J News UK, Chikako Osawa-Horowitz
桜堂 SAKURA DO
283 Putney Bridge Road London SW15 2PT
Email: meirubin@sakurado.co.uk
Phone: 075 2582 0417
最寄りの駅:
サウスウェストトレイン、パットニー駅
ディストリクトライン、イーストパットニー駅