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イギリスで教育しよう!習い事異聞その3

習い事異聞その3

そしてもう1つの習い事は公文だ。私は日本の掛け算の九九は素晴らしいシステムで、日本人の計算が速いのは九九のお陰だと思う。長男は英国の学校で6歳から掛け算を習ったが、九九ではなく、ただ『2かける2は4,2かける3は6、2かける4は8。。。』と12の段まで覚えさせるこちらの方法だった。その覚え方に問題があったわけではないが、それでもその時に日本の九九の方式の方がずっと速く覚えられると思い後悔したので下の2人には九九を習わせることとし、たまたま歩いて2分の所に教室があったので公文を始めさせた。教室の責任者はS先生と仰って長年ロンドンで公文教室をなさっており、とても親切な方であった。歯を磨くのと同じように毎日の日課としないと公文をこなせないと考え、長女には朝起きてから学校へ行くまでの間に毎日、公文の練習をさせた。彼女が通っていた学校には、朝9時10分前に家を出れば始業時間に十分に間にあったので、7時半に起きて学校に行く準備を済ませれば、朝の時間を有効に使えた。これは近くの学校を選んだメリットだったと思う。計算が早くできれば算数の文章題を解くのにもとても有利になるので、長女が中学受験で算数が得意だったのは公文のお陰だと思っている。長女は中学受験が終わった後も公文を13歳まで続けたが、最後はAレベル(高校2年生ぐらい)の算数まで進んでいた。しかし結局彼女の頭は数学向きではなかったようで高校2年の現在、特別に数学ができるわけではない。それでも小学生の時に算数が得意だと思えていたのは彼女の自信につながったので良かったと思う。

そして最後の習い事、それは日本語である。土曜日に日本語の補習校に通わせた。長男が補習校の小学校1年生のときはロンドンに企業から派遣されている駐在員子女が多かったが、時代は変わり、国際結婚している方たちのお子様方、苗字が英国名の子供達がクラスの半分を占めるようになっていたので驚いた。長男が通っている頃に比べれば日本に帰ってからの受験に備える塾や日本からの通信教育等の数も増え、補習校だけが日本教育をこちらで継続する場ではなくなってきた。そのため補習校に通わせる目的も、日本にいるのと同等のレベルの日本語の維持というよりは、あくまでも英国の教育システムがベースとした上で日本語に触れていることそのものに意義を見出すというものに変ってきているように思えた。つまり補習校での日本語教育に期待する内容が変わってきたと言える。週5日、現地校に通い宿題をこなしながら土曜日にも朝早く起きて3時間日本語の授業を受け、次の週までに宿題をこなすのは、親も子もかなりの決意がないと続かない。長男は高校3年生の最後まで補習校を続けたが、二男が土曜日にも現地校の授業があることから、中学から補習校に行かなかったこともあり、3番目になって親として気が緩んできたのかもしれないが、結局、長女が補習校に通ったのは中学校1年までだった。日本に年に2度、夏休みと冬休みに帰っているので、話すことは苦にならないが、日本語で小説が読めるとか、新聞が読めるまでのレベルには至っていない。 言語がアイデンティティに影響を与えるという意味では、子供たちにはやはり日本人であるという自覚を持てるだけの日本語レベルは持ってもらいたい。その思いから日本語の補習校に通わせた。しかし我が家の場合は子供の教育を英国私立学校に求めることにしたこと、そしてそれに伴い、外国人であるが故に親として適切な英語を家庭内で教えることができないとの思いから日本語よりも英語を重視したこと、これらが子供たちの現在の日本語のレベルを表している。主人はこの点については後悔があるようだが、それは、前述したように、英国教育システムを完走すると共に日本語教育も続けるにはかなりの決意を要するということを彼は日常の問題として理解していないからだと思う。私は、むしろ必要性を重視すべきと考えている。語学の習得はきりがなく、結局は本人が将来どこに住むかによって日本語の必要度も変わってくると思うので、本人がどの程度日本語を学びたいか、彼女の意思に任せるしかないと思う。ただ、英国で教育をするに当たって1つ共通して言えることは、将来、日本をベースに活躍する人間にしたいか、外国をベースに活躍する人間にしたいか、その点だけは明確なビジョンを持っておく方がいいということだろう。(続く)

*学校区分の日英比較は大体下記のとおり。(英国日本婦人会発行『ロンドン暮らしのハンドブック』2017年5-8改訂版p。35参照)

Miho Uchida/内田美穂

聖心女子大学卒業後外資系銀行勤務を経て渡英、二男一女を育てる傍らオペラ学を専攻、マンチェスター大学で学士号取得。その後UCLにてオペラにおけるオリエンタリズムを研究し修士号取得。ロンドン外国記者協会会員(London Foreign Press Association)。ロンドン在住。ACT4をはじめ、日本の雑誌にて執筆中。

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