素晴らしい芝居やミュージカルは観る人を魅了し心に深くそのストーリーを刻み込む。
舞台がそこに行き着くまで脚本家、演出家、俳優たちの幾度なく繰り返される稽古があってからこそ。しかし舞台は表があれば裏があり、普段、観客の目に見えないところで舞台を支える人たちの存在がある。
©️J News UK, Chikako Osawa-Horowitz
その一人、ロンドン在住で舞台美術家、レイコ タナカ モロウ。彼女は今回‘It Tastes Like Home’というミュージカルの美術とコスチュームを担当しているというので、リハーサルにお邪魔することにした。彼女は大分県佐伯市出身。舞台美術の世界に携わり14年、舞台空間デザイン、小道具、最近ではたまに衣装も手がける。在英年数 約6年、イギリスの舞台芸術から学ぶものと、日本人としての美意識も活かし、自分なりの舞台空間を模索していきたいという。
筆者が訪れた日は劇場リハーサルではなく、スタジオでの通し稽古だった。この日まで舞台のストーリーやキャスティングの詳細は一切知らされていなかった。実はこの芝居がロンドンに移民して来たジャマイカ人家族と中国人家族、そしてそれら2世のお話。
©️J News UK, Chikako Osawa-Horowitz
©️J News UK, Chikako Osawa-Horowitz
実際にはただジャマイカ人と中国人だけに起こるシチュエーションではない。自分の生まれた国ではない国に移り住み、次世代そしてその次の世代のアイデンティティが一体どこにあるのか?という問題提起をしている作品であり、どの人種にでも当てはまるのではないだろうか。筆者自身、海外生活が27年目、日本で育った年月よりも欧米国での生活の方が長くなってしまい、一体自分のアイデンティティは?と長年自問自答してきている一人である。脚本家のローナさんにどのような思いでこのストーリーを書いたのかインタビューしてみた。
題材がとてもシリアスにもかかわらず、それをうまい具合にユーモアを混ぜ合わせコミカルに表現している。途中目頭が熱くなる場面もあり、最後まで話がどのように展開していくかが面白い。俳優さんたちの演技力、歌唱力、どれをとっても素晴らしい作品として仕上がることは間違いだろう。是非ウェストエンドではない作品もどうぞご覧くだされ。
1つ残念なことはレイコさんにももっとフォーカスしたかったが、それはまた次回ということでご了承いただきたい。
Clapham Fringe
The Bread & Roses Theatre
68 Clapham Manor Street
London SW4 6DZ
13 - 15 October 2017, 7pm
Tickets:£12/£10
www.claphamfringe.com/it-tastes-like-home.html